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~妄想ブログ⑤~無自覚なあの子





(足元に虫が…っていうのは無理があったかな。)



我ながらまた酷い理由だと、言ってから後悔した。



まぁ……悪い虫がいたことに間違いはないか。



自覚はあるが、最近本当に感情が押さえられない。



―――あの子に触れたい衝動も………。



だから思わず彼女の手を取り、口づけしてしまった。



…あの子がまた、自分の魅力に気づかず『プリンセス・ローザの魔法』のお陰とか言うから…、自覚してもらいたかった。



俺が思わず口づけしてしまうほど、君は美しいってことに。



それでもきっと、あの子は俺の行動の意味までは気づかないだろう。



この後も、何事もなかったかのように接し、今日も二人きりの部屋で眠る。



…勿論、何かしてしまうなんてことそれこそ大問題だし、あり得ないんだけど。



でも…頬にキスをしたあの時のように、また俺のこと意識してくれるんだったら…今度は、この欲望を隠さずにいよう。



そして…




「蓮!!!」



思考の渦の中にいた俺を、突然駆け寄ってきた社さんが引き戻してくれた。



「どうかしました?」


「…それが、言いづらいんだけど… 」


「え?」


「キョーコちゃんの様子がおかしいんだ」



この時は…てっきり、あの子がまた俺のるつぼにハマってしまってるのかな、なんて淡い期待していた。



でも、次にあの子を目にいれた瞬間、そうではないことにすぐ気がついた。



「京子ちゃん、どうしたんだよ~?!」



彼女の周りに心配したスタッフが声をかけている。



それに対して最上さんはというと――…



「わたくしに、近寄らないで頂戴。」



…―――『美緒』が取り憑いていた。



「…社さん、なぜこんなことに?」


「俺も、さっき声かけたとき驚いたよ…。
スタッフに聞いたんだけど、どうやらキョーコちゃんにグレープジュースと間違ってワイン出しちゃったみたいなんだ。
しかも何でか知らないけど、一気飲みだったらしくてさ…。
止めた時には遅かったんだって」


「それで、あんな感じなんですか…」


「うん。今は『美緒』みたいだからまだいいよ…」


「え?!」


「さっき一瞬『Mr.ヒズリの息子、クオン』になってたみたいでさ…。
カタコトの日本語と父さん自慢してたから、周りの人はもう困惑だったよ」


「……。」



17歳の女の子がワインを、それも一気飲みだなんて。



最上さんのことだから…お酒飲むのも初めてそうだしな。



とにかく、早くこの子を人目のつかない所へ連れて行こう。



「最が…」
「兄さん!!」


「「え」」


(や、やばい……!!!!!)


「「兄さん?」」



最上さんの周りにいたスタッフが俺と彼女を交互に見つめながら、目を見開いている。



「もう、アタシをおいてどこっ…ふっ…むっ……」


「最上さん、幻覚でも見てるのかな、とにかく休もうか」



とっさに彼女の口を塞ぎながら、なんとかその場を笑顔で切り抜けることに成功し、連れ出した。



社さんも俺と考えてたことは一緒みたいで、すぐに会場の別室を手配してくれ、最上さんの口を押さえながらも、なんとかバレないように移動して、三人で別室へ入る。



…お酒のせいで体が火照ってるんだろうけど、彼女の身体からすごい熱を感じた。



「あっ焦ったぁ~……でもさすが蓮、うまく切り抜けたな。俺、水もらってくるから」


「ええ、ありがとうございます」



部屋に入ってすぐ、社さんは水を取りに行ってくれ、部屋には俺と酔った最上さんだけになった。



「ちょっと…!苦しいわ、兄さん!!」


「ごめんね、最上さん…。俺がわかる?」


「カイン兄さん…?」


「………。」



駄目だ。



今のこの子の中に『最上キョーコ』はいない。



お酒を飲んだせいなのはわかるけど…、彼女の演じた役がこんな形で影響を及ぼすなんて。



役に入り込んでる最上さんだからこそ、なんだろう。



慣れないお酒のせいでいつもの最上さんの意識が役に支配されているのか…。



(…こんなことってあるんだな。)



「…今、社さんがお水持ってきてくれるから、もう少し待ってね」


「……………敦賀…さん?」


「…!よかった、最上さんだよね?」


「……ねぇ、あたし、すごく退屈なの。暇潰しに遊んでくれない?」


「え?」



クスッと笑った最上さんはそう言うと、片手で俺の手を取り、もう片方の手を俺の頬に当てた。



「……敦賀さんって、近くで見ても綺麗な顔。でも、綺麗すぎで傷付けたくなっちゃう…かも」








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「………。」



(『ナツ』なの…かな。)



…少なくとも、最上さんの人格ではない。



『ナツ』はいじめっ子の役だって言ってたし…何より、今の最上さんの容姿と彼女の性格が一番合っている。



怪しい笑みを浮かべながら無言で近づいてくるナツに、少しずつ引き込まれる。



(お願いだから…そんな顔で俺を見つめないでくれ。)



(……理性が押されられなくなるだろ。)



「…………っ」



もう少しで唇同士が触れる距離まで近づいた所で、彼女の意識がフッと落ちていき、俺の肩に頭が乗っていた。



同時にドアをノックする音が聞こえて、我に返る。



「蓮、水持ってきたぞって、大丈夫か?!」


「はい……でも、寝ちゃったみたいです」


「そっか、まぁでも、とりあえず安心だな」


「しばらくここで寝かせておいて、あとで一緒に連れて帰ります」


「わかった。それじゃすぐ出れるように早めに手配しておくよ」


「そうですね、よろしくお願いします」



続く…
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